放射線治療を目指す方へ

 キューリー夫妻やレントゲン博士の伝統のある欧米では、がんは放射線治療で治すものという意識が元々一般にも
あったのに対して、日本では少し前までは、他の治療法ができなくなった、治る見込みのないがん患者さんに行う治療
という暗いイメージがありました。手術療法が中心の胃がんが多かった日本では、胃がん=手術から、がん=手術の
図式が定着したともいわれています。しかし、今では、日本でもがんに対しては手術、化学療法、放射線治療の
三大療法、あるいは分子標的薬や免疫療法も含め、様々な方法で集学的に治療することが必要になっています。

 特に、放射線治療では、多くの腫瘍において手術などと同等の治療成績で、かつ副作用の少ない治療ができます。
欧米では全がん患者のうち放射線治療を行う方は60~65%を占めています。日本ではまだまだ少なく30%弱ですが、
今後は欧米並みになってくると思われます。

 特に、IMRT(強度変調放射線治療)という方法ができるようになってからは、線量分布の点ではほぼ理想的な
放射線治療ができるようになっており、今後ほとんどの治療がこの方法になると思われます。しかし、IMRTは時間が
かかることが欠点で、ごく一部の疾患にしか行えませんでした。しかし、東海大学でも導入した、回転しながら
照射する方法(VMAT)では短時間であるばかりでなくより正確に治療ができます。

 機械が正確でも、患者さんが動いては意味がありません。特に最近は乳腺への照射の際に心臓への線量を減らすために息を吸って止めている間にする方法もあります。突然の動きも検知するような安全対策も重要です。2016年度から3年計画で増設、更新を行い、全装置で回転照射に対応する予定です。これによって、広い照射範囲から頭部の精密な治療まで安全に全ての治療に対応できる体制が整います。

 しかし、安全は最終的には人の問題です。個人の意識に頼るだけでは複雑なシステムの安全を確保することができません。全員が、日々安全に注意するとともに、医学物理士という安全管理を担当する職種を3名配置し過去の事例などを解析、検討しながら誤りの起こりにくいシステムにする努力をしています。

 当放射線治療室には医師、技師、看護師、メディカルセクレタリーと、この医学物理士がいますが、これらの全員が協力して、放射線治療を受けられる患者様にはそれぞれにあった最高の治療を高い安全水準でご提供したいと思います。

東海大学医学部専門診療学系放射線治療科学教授

國枝悦夫